Nittoの砦を守るのは忍者?――「検査課 田中靖雄」

人生100年時代――。この言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。何とはなしに「長生きの時代」というイメージを想像しますが、その中身はちょっと異なります。100年という長い人生になったのだから、それに合わせて「学び直し」「働き方」「幸せの追求」なども、これまでと異なる発想や選択があっても良いのではないだろうか? と説いているわけです。

確かに合理性がある話であり、また憧れる生き方でもあります。
でも、身近にそんな人は普通いませんよね?

じつは、Nittoにはまさしく人生100年時代を‶地で行く〟社員がいます。それが検査課で働く田中靖雄(77歳)。Nitto遊具は安全か。デザインは完璧か――。市場に出す製品の最終チェックを任されている、言わば‶Nittoの砦〟のような存在です。

「孫の知恵を借りるつもりで働いています。この年齢まで働けるなんて幸せですよ」
とことん低姿勢な田中。いつもニコニコと笑顔を絶やさず、物腰も言葉づかいも柔らかすぎるほど柔らかで、‶Nitto一番の好人物〟といっても過言ではありません。こう書くと、単なる優しいおじいさんというイメージですが、果たしてその実態はいかに――。

今回はそんな「Nittoの砦な職人」のお話です。

お客さまに育てられたNitto

「80歳の現役サラリーマン」とか「90歳でも若手に負けない」とか、元気な高齢者にフォーカスした番組をよく見かけます。人生100年時代という社会を表現するには、確かに分かりやすい演出かもしれません。しかし、そのせいか「余暇のつもりでのんびり働いているのでしょう?」「会社のイメージアップのためじゃない?」など、うがった見方をする人も少なくありません。

しかし、田中にはこうしたイメージは一切当てはまりません。厳しくも丁寧な仕事ぶり。今の時代に相応しい若手教育。尽きることのない好奇心――。

社会インフラでもある遊具は、「安全性に問題ないか」という観点はもちろん、「お客さまのデザインニーズを満たしているか」など、ビジネス視点も欠かせません。その検査を担うのが田中。責任は重大であり、当然ながら生半可な人間には務まりません。

ベテランだから田中が働いているのでなく、高齢だから田中が働いているわけでもなく、「Nittoに必要な存在だから」田中がいるわけです。実際、周囲の者は誰も彼を高齢者とは思っていませんし、そんな扱いもしません。

階段をスススっと忍者のように駆け上がるし、若手より姿勢は良いし、声は大きいし、よく笑うため、本当に100歳まで働くだろうと思われています。

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(忍者のように軽快な田中)

「検査というと、遊具の‶現物〟を見てチェックすると思われがちです。寸法を図ったり凹凸を確かめたり、実際はそうなんですが、じつは検査の仕事はその前から始まっています。先に設計図を見て、どんな遊具かを頭に叩き込むんです。そうして初めてお客さまのニーズにお応えできるんです」

お客さまのニーズとは「設計図通りにできているか」という、完成度を指します。田中いわく、今のお客さまは非常に目が肥えており、ちょっとしたデザインの違いにも気づくそうです。クルマや家電が時代とともに美しくカッコよくなったことで審美眼が鍛えられ、同じような観点から遊具も眺めるそうです。

つまり、設計図通りの美しくカッコよい遊具こそ、本物の遊具であると――。

だからこそ、事前に設計図を頭に叩き込んだり、気になる箇所があればデザイン課に聞きに行ったりと、本来は必要でない作業にも躊躇なく、情熱を持って臨むのです。「クレームが少ない」「設計図通りの高い完成度」というNittoの高い評判は、田中をトップとする検査課の役割が大きいというわけです。

ちなみにNittoではあらゆる工程で二重三重のチェック体制を敷いており、検査課である田中は日々その最前線に立って働いています。
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(遊具の全体像を確認する「仮組検査」)

大きな遊具ともなると、工場からそのまま出荷するのは不可能です。小さなパーツや部品ごとに運び出し、公園に着いてから現地で組み立てます。このため「正しく組み合わさるか」「可動に問題はないか」といった細かな部分は、出荷前にいったん工場で組み立てて検査を行います。これを「仮組検査」といい、検査が終了すると解体して再び作業を続けます。

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(膜厚計で測定する「膜厚検査」)

塗料は定められた通りの厚みがあるか――。なんと細かい作業と思われるかもしれませんが、遊具の検査はここまで徹底しているのです。

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(グローブを外し、素手で感触を確かめる田中)

鉄を溶接する際は金属の粉が飛びます。それは冷えて固まり、部材の表面には小さな突起ができます。これを「スパッタ」と言います。小さな突起でも、子どもが手に触れたりお尻で滑ったりすればケガをする恐れがあります。こうした微細な危険も見逃さないため、田中は素手で1つひとつの部材を検査していきます。

「ぼくら遊具メーカーは、お客さまに育てられているんです。時代とともにお客さまのセンスと目が肥えてくれば、それに我々も対応していかなければなりませんよね? 私もそうですが、ニットはお客さまによって80年ものあいだ育てられてきたんです」

田中の哲学は、Nitto社員にも響くものがあります。

人生を2倍、楽しむ方法

どこの製造業もそうですが、人材不足や若手教育に苦労している企業は少なくありません。若者はきつい仕事や、頭ごなしに指導されるのを嫌う傾向にあります。一方でベテランと呼ばれる社員のなかには頑固な者も多く、スムーズに技術を伝えることが難しくなっています。

そんななかキラリと光るのが、田中流の若手教育。ベテラン風を吹かせるのでなく、かといって若者におもねるのでもなく、じつに自然に若手を導きます。

「孫の知恵を借りるつもりで接するんです。例えば、ぼくと違う仕事の仕方をした際は叱るのでなく、『なるほど、そういうやり方もあるんだ』と、感心するようにしてるんです。決してわざとでなく、ぼくは本心からそう思うんです。若者の自由な発想は大切ですし、むしろベテランの方が学ぶこともあるはず。ぼくが若い頃はスパルタ教育が普通でしたが、やっぱり今の時代に合わせないとね。『会社に来るのが楽しい!』『遊具が好き!』って、ニットの若手社員には思ってほしいじゃないですか」

若手教育に限らず、田中はことあるごとに「働くことの楽しさ」や「会社のありがたみ」を語ります。とりわけ「遊具の素晴らしさ」に話題が及ぶと、ニコニコしながらもはや話が止まりません。社員のなかには不思議に思う者もいるようですが、そこには彼のキャリアが深く関係しています。

「ぼくね、じつは49歳でニットに転職してきたんです。通信会社で営業や生産計画などに30年ほど携わり、それからニットにきて28年も働いているんです。30年と、28年。普通に考えたら、どっちも1つの会社ですら長いくらいのキャリアですよね。49歳という年齢で大好きな遊具の仕事に巡り会えたのはラッキーでしたし、ニットという素晴らしい会社だから、ここまで続けられた気がします」

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(年季と愛情が詰まった田中の職場)

大ベテランというと、1つの会社で1つのキャリアを磨くイメージですが、田中の場合はさらにその上をいくというか、斜めを進むというか、まさしく自由なライフスタイルを実践しているのです。人生を2倍、仕事を2倍も楽しんでいるようで羨ましくもあります。

もしかすると、これこそ人生100年時代の理想形の1つかもしれませんね。

遊具が子どもの未来をつくる

コロナ禍の今、田中は何を想うのか――。

「昔ね、『ロケットタワー』という回転式のすべり台がカッコよくて好きだったんです。まさか自分がニットに転職して、それに関わるとは思ってもいなかったんですけどね。今、お母さんたちは心配ごとが多いと思うんです。ぼくが子どもの頃はみんな木登りして遊んでたから、多少ケガしたって母親は心配もしない。でも今はそうじゃない。時代が変わったんです。だからこそ、ニットの遊具は規格がしっかりしてるし、安全性も抜群だから、『お母さんたち、安心して子どもを遊ばせてあげて!』と言いたいんです」

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(今でもNittoはロケットタワーをつくっています「左:旧作」「右:新作」)

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(話し出したら止まらない、素敵な笑顔――検査課 田中靖雄)

忍者のように素早い田中ですが、そうは言っても孫はいます。かつて公園に孫を連れていったときのこと、遊具で遊んでいた孫が、ふいに田中のほうを振り返ると、嬉しそうにこう叫んだそうです。
「この遊具って、おじいちゃんがここまで来てつくったんだよね!」

その遊具とは、Nitto自慢の回転式の丸い遊具「グローブジャングル」。幼いながらにNittoのマークが目に焼き付いたらしく、おじいちゃんの仕事ぶりと一緒に、今でも鮮やかな記憶として残っているとか。孫にとっても田中にとっても、最高の想い出となったに違いありません。

「遊具はね、子どもの発想力と人生を豊かにするものなんです。これからもいっぱいつくって、いっぱい届けたいですね」
ニコニコと無邪気に語る田中。その笑顔には、こんな時代だからこその夢と説得力があります。


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