「世界最長としてギネス記録に載ってるうんていの設計図を見せてくれませんか?」
私たちのもとに可愛らしい手紙が届いたのは、去年のある秋の日でした。最初は手紙の意味がよく分かりませんでした。雲梯(うんてい)の設計図など、いったい何に使うのだろう?
何より不思議だったのは手紙の送り主。それは小学4年生、しかも女の子でした。
(突然届いた女の子からの手紙)
しかし、手紙を読み進めていくうちに、小さな女の子が抱く‶大きな野望〟が理解できました。
夏休みの宿題として「世界最長の雲梯」を模型にしたい――。
「世界最長の雲梯」とは、高知県にある長さ102メートルの長大な遊具であり、その名を「ムカデ雲梯」といいます。1997年にギネス記録として認定されており、私たち日都産業がつくった製品でもあります。まさか、あの雲梯を模型にしようだなんて、何てユニークな発想をする女の子なのでしょう。ちょっとした感動を覚えた私たちは、さっそく女の子に設計図を送りました。
後から知ることになるのですが、じつはこの女の子、「本物そっくりの模型をつくるなら、やっぱり本物のうんていを見ておかなくちゃね!」と、すでに高知県へ旅に出ていたのです。
遊び過ぎてしまったおちゃめな女の子
女の子の名前は、仮にカオリちゃんとしましょう。模型づくりを夢見たカオリちゃん、さっそくGWを利用して自宅がある横浜から高知県香南市の公園へ向かいました。間近に見る「ムカデ雲梯」は想像以上に長く、コースは途中で曲がっているためスタート地点からゴールは見えません。
小学4年生の女の子にとっては、まさに難攻不落の遊具。カオリちゃんは時おり休みながら、しかしコツコツとギネス記録の長~い雲梯にチャレンジしたそうです。
「70メートルまでいき、たくさんマメができました。とても楽しいうんていを作って下さり、ありがとうございます」
「楽しくて2日も行きました!」
カオリちゃんウッカリしていました。遊ぶのに夢中になるあまり、本来の目的である「模型づくりの参考にする旅」ということをすっかり忘れていたのです。
(果たして笑顔も102メートル続いたのでしょうか...)
自宅に戻り、困ってしまったカオリちゃん。そこで雲梯のことをいろいろ調べた結果、私たち日都産業のホームページにたどり着き、思い切って手紙を送ったらしいのです。
プロも唸る本格的な模型
送られてきた設計図をもとに、まずはお父さんと相談しながら模型の全体像をイメージしたカオリちゃん。夏休みの宿題とはいえ、わざわざ設計図を取り寄せるほどの熱の入れようです。忠実に再現するため、そしてカオリちゃんに良いところを見せるため、手伝うお父さんの眼差しは真剣そのものです。
(小学生の宿題とは思えない緊迫した雰囲気)
ムカデ雲梯は広い公園にあります。実際にぶら下がってみると分かるのですが、足元には芝生が延々と広がっています。驚くことに、カオリちゃんはその芝生まで再現しようというのだから、かなりの本格派です。
(楽しそうな塗装作業)
ピンセットを使ってバーを1本、また1本、丁寧に貼り付けていきます。芝生はおろか、雲梯に沿うように緑豊かな植樹まで見事に再現。このこだわり、このクオリティー、カオリちゃん半端ないって! もはや立派なクリエイターです。
(GWに遊んだ記憶が蘇っているのでしょうか)
(ついに完成した1/200スケールの美しきジオラマ)
カオリちゃん、将来どのような仕事に就くのでしょうか――。思わずそんな想像をしてしまうのは、ずっと昔から子どもたちの遊びに携わってきた遊具メーカーだからでしょうか。
地域のシンボルとして輝き続ける「ムカデ雲梯」
102メートルというギネス記録をつくった「ムカデ雲梯」。設置には膨大な時間を要し、バーの数は400本にも及びます。ところでこのギネス記録ですが、私たちが狙ったものではありません。
「長野県に100メートルの雲梯があるので、それより2メートル長くしてギネス記録をつくりたい」
高知県の自治体からそんな依頼があり、製作に至ったわけです。もちろん、私たちもメーカーとしての誇り、そして技術力を世の中に残したいという想いはありますので快諾しました。
ただ、記録より大切なのは、「遊具を通して何を残せるか」という想いです。この公園ではムカデ雲梯を使った記録会を開いているそうで、それは私たちが想定していなかった出来事です。少なからず地域イベントや観光振興のお役に立てているのであれば、ギネス記録よりも嬉しい限りです。
(青空に伸びる姿はまるでムカデそのもの)
ちなみに雲梯は握力や腕力だけでなく、上半身を揺らすことでトータルに身体能力を鍛える遊具です。102メートルとは言わずとも、お近くの公園で雲梯を見つけたら、ぜひぶら下がって見てください。
とある営業マンとの交流から始まった企画
最初のお手紙からしばらく経って、再びお手紙が届きました。「模型が完成しました」というお知らせであり、もっとも喜んだのはとあるベテラン営業マンでした。じつは今回の企画にあたり密かに動いていた張本人であり、最初の手紙を受け取ってからいろいろな部署に掛け合って実現させたのです。
(うんていがとても楽しかったという一言が嬉しいです)
私たちは常日頃から、「遊具を売るだけの会社ではない」というポリシーを掲げています。それはもっぱら修繕やメンテナンスといったアフターサービスであり、仕事で関わるのは大人ばかり。今回のように、実際に遊んでいる子どもさんとの企画は初めてでした。カオリちゃんが感謝してくれた以上に感謝しているのは、むしろ私たちの方かもしれません。
ありがとうね、カオリちゃん――。
いつか私たちの会社に遊びに来てくださいネ。遊び心いっぱい、クリエイター魂いっぱいのユニークな社員たちが待っています。
ギネス記録のムカデ雲梯だけでなく、立地に合わせて様々なタイプのムカデ雲梯をつくっています。お気軽に下記よりお問い合わせください。
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