「スチュワーデス」が「キャビンアテンダント」になっていたり、サッカーの「ロスタイム」が「アディショナルタイム」になっていたり。いつの間にか呼び名が変わっていることは結構あります。私たち遊具メーカーの世界も例外ではありません。
例えば、ぶらんこの周囲に張り巡らせる「安全柵」ですが、現在は「境界柵」と呼んでいます。
さて、名前の変更のほかにも変わっている部分があるのですが、お気づきでしょうか。
(安全柵から境界柵へ)
それは「ぶらんこと柵の距離」です。昔と比べるとかなり広がっているのです。
理由は言うまでもなく、安全のためです。
ぶらんこと安全柵に関しては昔から数多くのエピソードが聞かれますが、なかでも多いのは「ぶらんこから飛び降りて柵を越えられるか」というもの。年齢を問わず地域を問わず、誰もが一度はチャレンジする‶永遠のテーマ〟ではないでしょうか。
ところで、なぜ子どもたちはそんな遊びを思いついたのかと言えば、安全柵が‶超えそうで越えられない絶妙な距離〟に設置されていたからでしょう。
普通に考えれば、飛び越えるのは不可能な距離です。運動神経が発達した子どもにとっても困難な距離です。ところが、冷静に考えないのが子どもの習性――。特にやんちゃな子どもほど、「もしかして、オレなら飛び越えられるかも・・・」と考えてしまうのです。成功すれば、間違いなくヒーローです。こんな背景から、多くの子どもは「柵越えゲーム」に挑みました。
結局、成功したという話は殆ど聞いたことがありません。やはり、物理的に計算された‶正しい距離〟だったのでしょう。反対によく耳にするのは、越えられずに柵にぶつかったという話です。
子どもは度胸試しが好きです。危険を顧みません。だからこそ、柵越えゲームのような「ギリギリの遊び」はなかなかなくならず、やがて安全上の問題が浮上したものと思われます。
そもそも、安全柵について根本的な勘違いをしている子どもも大勢いました。「安全柵」とは、ぶらんこから飛び越えられない「安全」を意味するのではありません。ぶらんこの近くで遊んでいる子どもが、不用意にぶらんこと接触しない「安全」を念頭に置いていました。
考えると、「安全な柵」という響きは曖昧なため、子どもが勘違いするのも無理はありません。
「境界の柵」なら、ぶらんことそれ以外の境目であることは簡単に気づくはずです。
「安全柵」から「境界柵」へ――。保護者にも子どもにも分かりやすい呼び名ではないでしょうか。
余談になりますが、海外でもぶらんこに境界柵はつきものです。ただ、日本とは設置の仕方が少々異なります。日本では前後左右に設置するのに対し、海外では‶左右のみ〟というケースが多いのです。一見すると危険そうですが、裏を返せば「ぶらんこの前後は危ないから、うかつに近づかないでね」という暗黙の了解なのでしょう。
公園って面白いですね。柵1つとっても、遊びのルールや子育ての違いまで見えてくるのですから。