「なんでこんなところに、すべり台?」
先日、都内のとある街を歩いていたところ、あまりに不思議な光景に出会い、思わず写真に収めました。建物と建物の狭い隙間、1メートルばかりの空間に、なぜかすべり台があるのです。
(不思議なところにすべり台)
見上げると、一方の建物のちょうど2階にすべり台の踊り場がつながっています。
「住民は2階からすべり台で滑り降りるということ? なんで?」
すべり台は公園にあるもの――。そんな常識をすっかり覆されてしまい、しばらくその不思議な光景に目が釘付けになりました。
遊具が好きなあまり、自宅の庭にぶらんこを置いたり、ジャングルジムを設置したりといったケースはたまに見かけますが、しかし、このすべり台が鎮座するのは、建物と建物の隙間。どう見ても、単なる「遊具好き」といった風には感じられません。
狭い空間にピッタリはまったすべり台――。
美しく輝く銀色のすべり面――。
もしかして、斬新なオブジェ?
見れば見るほど「なぜ???」という気持ちが膨らむばかり。そこで建物のオーナーに尋ねてみると、まったく予想外の言葉が返ってきました。
気配りから生まれた「優しいすべり台」
「建物から伸びるすべり台ですが、じつは避難用のモノなんです」
建物の正体は「グループホーム」でした。病気や障害など生活に困難を抱えた人たちが、専門スタッフの援助を受けながら地域で暮らしていく、アットホームな小さい施設です。
お年寄りが多く、また、身体の状態も様々なため‶緊急時の避難経路〟としてすべり台を設置したそうです。なぜなら、ハシゴなどでは降りられない方もいるからです。ちなみに、消防署にも確認を取ったうえで安全に設置しているとのことでした。
入居するみなさんの日々の暮らしだけでなく、個性だったり気持ちだったり、細かなところまで気配りができるグループホームなのでしょうね。お話をしてくださった担当者の方もとても親切で、すべり台はまさしく‶優しさのシンボル〟のような気がします。すべり台をキレイに維持されている辺りからも、優しさと丁寧さが窺い知れます。
遊具とは、もともとは「遊ぶ道具」という意味です。しかし、ちょっと工夫をしたり視点を変えたりすれば、「命を守る道具」にもなるのですね。
素敵なグループホームの、優しいすべり台――。
遊具には、まだまだ遊び以外のニーズがあるのかもしれません。たまたま出会った不思議な光景にほっこりと癒され、そして、何かを学んだ気がします。
*取材協力:グループホーム「こころの郷」
*今回のような避難用すべり台は、「日本消防設備安全センター認定品」と呼ばれ、正確には遊具ではありませんので、弊社では扱っていません。
お気軽に下記よりお問い合わせください。
お問い合わせはこちら
/contact/