そのゾウさんは、こどもたちにとてもかわいがられていました。
せなかをなでられると、ゾウさんはやさしくほほえみました。
おはなをさわられても、ちっともおこりません。
「なが~いおはなが、かっこいい」
「おおきなせなかが、だいすき」
でも、ゾウさんもとしをとります。
いつしか、おはながいたむようになってきました。
せなかのぐあいもよくありません。
こどもたちに、ずっとかわいがってもらいたい。
ゾウさんは、そうかんがえていました。
ところが、あるひ、やさしいおとながこういいました。
「ゾウさん、あなたはもうじゅうぶんにはたらきましたよ」
「これからは、のんびりとやすんでくださいね」
ゾウさんは、こどもたちにおしまれながら、おわかれしました。
子どもの想い出をつなぐ「シンボル遊具」
ゾウさんは、じつはとある遊具のお話です。場所は、東京都渋谷区にある「代々木大山公園」。安全面で問題が生じたことに加え、設置から40年近く経過しており‶引退〟という道を選んだわけです。
一口に40年と言っても、長いですよね。ゾウさん遊具で遊んでいた子どもが大人になり、今度は自分の子どもを遊ばせていたかもしれません。40年には人それぞれの歴史があり、想い出があり、まさに住民から愛された「ステキなゾウさん」だったのでしょう。
(無事に引退生活に入った「渋谷大山のゾウさん」)
子どもや住民に親しみのあるゾウさんをモチーフにしたい――。
これが、新しい遊具を決める際のポイントになりました。引退したゾウさんを見ると、2本のすべり台があったり、下方にはトンネルがあったりと、「ワンストップでいろんな遊びが楽しめる構造」となっており、そのコンセプトを引き継ぐことにしました。
(青いゾウがユーモラスな「ゾウさんすべり台コンビ」)
一か所でいろんな遊びを楽しめる「コンビネーション遊具」に、ゾウさんを組み込みました。ゾウの鼻に見立てた大小のすべり台を2本つくり、それぞれに赤い階段を2つ用意しています。この写真からは見づらいのですが、足元がネットになったスリリングな「ネットわたり」など、少しだけ冒険色を追加しています。
(長~い、長~い「親ゾウさんの鼻」)
2本のすべり台は、仲良し親子という設定。だから高さだけでなく長さも異なります。それにしても親ゾウさんの鼻は長くて立派で、これならたっぷり爽快感を味わえますよね。事実、公園内にある保育室の先生たちからは、こんな嬉しい感想が届いています。
「ゾウさんが安全で楽しくなり、子どもたちは夢中で遊んでいます」
これから新しいゾウさんと、どんな想い出をつくっていくのでしょうか――。
引退したゾウさんのように、子どもたちに愛されて街のシンボルとなるような、末永い存在になることを願っています。
「マーケットイン」という発想
ゾウさん遊具の入れ替えに際して、当初は別のプランを用意していました。曲がりくねったすべり面が特徴の「スパイラルスライダー」や、よじ登って体力を鍛える「ツリークライム」など、やや冒険的かつ高度なコンビネーション遊具です。
ところが、これだと小さな子どもが遊ぶには少々難しいかもしれません。とりわけ公園内には保育室があり、その子どもたちが遊べないのは悲しいこと。そこで大きく方針転換をして‶小さな子どもも楽しめるつくり〟としました。
(ゾウさんすべり台コンビ「パース」)
遊具というのは、ある意味で社会インフラです。なるべく多くの人々に利用してもらい、楽しんでもらえるよう日々努力をしています。住民みなさんの声すべてに耳を傾けるのは難しいですが、それでも、お客さまの声を最大限に取り入れること、いわゆる「マーケットイン」の発想を、私たち日都産業は大切にしています。
あたらしいゾウさんは、こどもたちにやさしくむかえいれてもらいました。
でも、まだちょっぴりこどもになれていません。
「あたらしいゾウさん、せなかをさわるとぴくっとするね」
「あたまをなでてあげると、よろこぶよ」
ゾウさんの、ながいくらしがはじまりました。
いろんな動物をモチーフにしたコンビネーション遊具をつくっています。お気軽に下記よりお問い合わせください。
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