最新情報

  1. Home
  2. 最新情報
  3. 人生の途中で、遊具の世界へ――「メンテナンス部 神田裕太」

人生の途中で、遊具の世界へ――「メンテナンス部 神田裕太」

2020年06月30日Nittoの職人たち
  

「もし、本当に『遊び』を仕事にできるなら、夢があって楽しいと思い就職しました」
ちょっぴり恥ずかしそうに、しかし芯の強そうな言葉で語るのは、メンテナンス部の神田裕太(34歳)。遊びに関わる仕事がしたい――遊具メーカーであるNittoには、こうした発想を持つ社員が少なくありません。ところが、彼の場合はややその経緯が異なります。30歳を過ぎてNittoに転職してきたからです。

Nittoの特徴の1つに「プロパー社員が多い」という風土があります。つまり、学校を出るとそのまま「遊具づくりに携わりたい!」と入社してくる者が殆どなのです。対する神田は、ホテルや飲食業などで10年ほど働き、30歳という節目を迎えたところで、「やっぱり遊びを仕事にしたい!」と、Nittoに飛び込んできたわけです。

これから脂がのってくる、まさに働き盛り世代の転身は、さぞ大きな決断だったでしょう。何が神田を遊具に、そしてNittoに呼び寄せたのでしょう。今回はそんな「Nittoフレッシュな職人」のお話です。

資格の勉強をしながら、一人前を目指す

神田が所属するのはメンテナンス部。幾つもの公園を巡っては、遊具を点検したり修繕したりする毎日です。工具を握って黙々と作業に打ち込む。もちろん、向き合うのは遊具。一方、彼が働いてきたホテルや飲食業で向き合うのは、お客さま。仕事のスタンスはまるで正反対です。
20200627_kanda01.jpg
(Nittoの代表作「グローブジャングル」の点検風景)

「接客業との違いというより、公園や遊具には『規準』がたくさんあることに、最初は驚きました。安全に遊ぶための安全領域もそうですし、子どもの身体を想定したサイズ構造などもそう。接客業にもマニュアルはありますが、お客さま次第で柔軟に変えるのが普通です。ところが、遊具に関する規準はどれもが厳密。安全性が最優先ということなんです。これまで何気なく見ていた遊具も‶つくる側〟に回ると、奥が深いんです」

Nittoに入社して2年半の神田。日中は、先輩社員のサポートをしながら仕事を覚え、夜は資格を取るための勉強に勤しんでいると言います。資格とは、彼が最初に驚いた規準の数々です。覚えることはたくさんあって大変です。ただ、実務を通して遊具の仕組みなどを学ぶうちに考えも変わったそうです。

「規準がたくさんあることは、むしろ面白いということに気付いたんです。早く資格を取って一人前になりたいですね」

神田の希望に満ちた笑顔は、Nittoへの転職が間違いでなかったことを物語っているようです。日差しが強くなり、色白だった彼もすっかり日焼け顔に。そんな姿がいっそう逞しく映ります。

2年半で気づく、Nittoの魅力と底力

遊具の点検業務は「公園単位」で行います。1つの公園にはぶらんこやジャングルジムなど幾つもの遊具があり、それらを二人一組で点検します。1つの公園の点検を終えたら次の公園に移り、そこでの作業を終えたらまた次の公園へ移動――小さな公園なら1日で5~6つの公園を回ります。

しかし、公園にはいろんなタイプがあります。例えば、その地域を代表するような大きな公園なら、当然ながら点検すべき遊具の数も一気に増えます。そこには数が増える以上の苦労もあるそうです。

「大きな公園になると、地図を見ながら公園内を歩き回るような状況です。遊具を見つけては点検し、また地図を手がかりに遊具を探して点検してと、まるでオリエンテーリングみたいです。夏場は体力的にキツイですし、すべての点検作業を終えるのに2~3日かかります」

20200627_kanda02.jpg
(広大な敷地に、果てしなく続く遊具の数々)

ちなみに、公園には様々なメーカーの遊具が設置されています。ぶらんこはNitto製だけど、シーソーは別の会社といった具合です。業務は公園単位で行うため、よその会社の遊具も点検するわけですが、メンテナンス歴2年半で気づいたことがあるそうです。

「ニットの遊具は、とにかく点検しやすいんです。とても単純な話ですけど、例えば『ボルトが締めやすい』とかは、割と重要なことなんです。海外製のボルトだとカタチが違う場合があって、通常の工具では絞められないんです。わずか一か所の不具合のために、その遊具全体が使用禁止になる場合もあります。その点、ニット製品は国産だから、何かあってもすぐに対応できます」

20200627_kanda03.jpg
(点検しやすいNittoの遊具には、もちろんあのマークが)

「点検しやすい」とは、Nittoのモノづくりにおけるポリシーでもあります。遊具に点検業務は必須であり、裏を返せば「最初から点検しやすくつくる」のも重要です。そうすれば、自治体は「公園の管理が楽」になります。点検や修繕にかかる「コストを減らせる」だけでなく、スピーディーな対応は「時間の節約」にもなります。つまり、メーカーの都合というよりは、「お客さま」「子ども」のための設計思想というわけです。

こうした細かなこだわりも、座学でなく「仕事をしながら」「実物を点検しながら」だからこそ、より強く実感すると神田は言います。このほかにも「遊具の色合いがキレイ」とか「とある部材だけやたらNitto製品を見かける」など、公園の所々においてNittoの‶存在感〟を感じるそうです。

見ているだけで価値がある

メンテナンス部では業務を終えると報告書をつくります。神田のユニークなところは、「山間の公園は利用者が少ないようなので、新しいタイプの遊具が必要かも」など、日々の作業から感じ取ったことを‶製品アイデア〟としてしたためることです。観察眼が鋭く、そしてNittoに貢献しよう、子どもを楽しませようという精神が強いのです。

じつは、公園に置かれた‶実際の遊具〟と最も接しているのはメンテナンス部。Nittoのモノづくりとは、遊具をつくって終わり、設置して終わりでなく、その後のアフターサービスまで含めた提案力にあります。Nittoのメンテナンスに定評があるのは、神田もそうですが、人材を育てつつ会社のポリシーをしっかり継承するから。

20200627_kanda04.jpg
(来年は一人前に。そして観察眼にも磨きをかけて――メンテナンス部 神田裕太)

「新型コロナがやってきて、遊具の利用が一時制限されました。哀しいけど、ふと、誰も遊んでいない遊具を見て思ったんです。『遊具は見ているだけでも価値がある』と。モニュメントであり、アートであり、景色でもあり。いろんな価値を持つ遊具って、やっぱり面白いです」

Nittoの遊具のみを集めた巨大な公園「Nittoランド」があれば面白いかも、と語る神田。さらりと楽しい夢を語れるのは、仕事が充実している証拠。でも、日常のなかで見つけた‶地道な喜び〟にこそ、彼がNittoに転職してきた想いが現れている気がします。

「点検作業してると、不思議に思ったのか、公園で遊んでる子どもたちが代わる代わる見に来るんですよ。やっぱり実際に子どもの顔を見れるのは楽しみです。『また来るね!』なんて言ってくれる子どももいたりして、それが今の仕事で一番の励みになります」

また来るね!――。
またおいで!――。

ちょっとシャイな神田。見かけたら、声をかけてあげてくださいね。


お問い合わせはこちら
/contact/