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手探りの開発だから、気持ちが分かる――「特別支援学校」

2020年07月28日注目の納入事例
  

なぜNittoはユニバーサルデザインに興味を持ったのか――。

遊具業界におけるユニバーサルデザインは、市場規模にしても製品動向にしても、やや特殊な位置づけとなります。製作においても特殊技術が要求されるため、進出するか否かは経営判断の分かれるところです。企業ですから、やはり利益を考えなくてはなりません。

結論としては「Nittoの本社が東京にある」「隠れた利用者ニーズがある」という2つの理由から進出し、今ではこの分野におけるパイオニア的な存在となりました。詳細は当HPにてご紹介していますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
ユニバーサルデザインに注目したきっかけ

さて、実際のところ。
ユニバーサルデザイン遊具はつくるのも難しいのですが、じつは設置するにも難しい面があります。「あらゆる条件の子どもに利用して欲しい」とはいえ、そこはやはり特別な遊具。普通の街中では、そもそも‶障害を持つ子どもが公園まで行くのが難しい〟という事情もあり、思ったほど利用が進まないこともあります。

その一方、日常的にユニバーサルデザイン遊具を必要としているところもあります。それは、いろんな障害を抱える子どもが集まる場所。すなわち「特別支援学校」です。

「すべり台で遊びたいけど、遊べる場所が全然ない」
「車椅子だからぶらんこに乗れない!」

それなら、本当に必要としている子どもたちの所に設置すれば良いのでは?――。
こんな発想から、Nittoは多くの特別支援学校にユニバーサルデザイン遊具をお届けしてきました。

ところで、ユニバーサルデザインという新分野に挑んだことはNittoにも想像以上のメリットがありました。ほとんどが独自に開発した‶オリジナル遊具〟であるため、開発陣には技術の進化を、営業部門にはチャレンジ精神をもたらしたのです。

「ユニバーサルデザイン遊具って面白い!」
デザインが面白い。発想が面白い。技術が面白い――。見れば思わず納得してしまう、Nittoのユニバーサルデザイン遊具たち。なかには‶日本初の不思議な遊具〟もあります。今回はそんななかから「とびきりステキな遊具3選」という事例です。

その1 車椅子からすべり台へ

遊具の定番は多数ありますが、やはり「すべり台」はその1つではないでしょうか。どんな小さな公園にもありますし、滑り降りるときの‶未知なる快感〟は子ども時代にしか体験できない気がします。

しかし、すべり台を楽しもうと思ったなら、まずは自力で階段を登らねばなりません。当然ですが車椅子の子どもには無理です。そこで開発したのが、車椅子の子どもも楽しめるすべり台。

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(車椅子でスロープを上る「ローラーすべり台」)

発想は非常にシンプル。階段の代わりに車椅子用のスロープを設置したのです。写真では黄色の部分がそれにあたります。スロープ頂上となる踊り場には車椅子の高さを考慮した段差を設けており、スムーズに車椅子から降りることが可能。あとはそのまま赤いすべり面まで移動し、滑り降りるという寸法です。

スロープは車椅子が十分に通れる幅広な設計のほか、周囲には転落防止の柵を設置しており安全性も抜群。車椅子の子どもが自力でスロープを上がって遊ぶことも可能ですし、保護者や先生が車椅子を押し上げることも想定した設計となっています。

その2 保護者と一緒にシーソー

健常者が何気なく利用している遊具ですが、障害を持つ子どもには思いのほか難しいこともあり、例えばシーソーもその1つです。安定して乗っているのが難しかったり、身体を支えるバーから手を放してしまったりと、シンプルな遊具ながら油断は禁物なのです。そこで考案したのが、保護者や先生が付き添いとして一緒に乗るタイプ。
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(優しい設計と愛らしいデザインの「オリジナルシーソー」)

障害にもいろんなタイプがあります。さまざまなシーンを想定し、片側に3人まで乗れる設計です。だから赤いシートは合わせて6つ。背後から子どもをサポートしたり、前方に座って安心感を与えたり、あらゆる子どもが安全かつ快適にシーソーを楽しめるよう配慮されています。また弓のように沿った独特のフォルムも可愛いと評判です。

その3 車椅子のままぶらんこへGo!

「車椅子だからぶらんこに乗れない!」
ユニバーサルデザイン遊具を考えるうえで最大のネックとなったのが「ぶらんこ」です。前後に揺れる動作に注意が必要なほか、子どもが落下してしまった場合はぶらんこのシートに当たってしまう可能性もあります。また根本的な問題として、車椅子からシートに乗り移るにも手間と時間がかかります。そこで編み出したのが、車椅子のままぶらんこに乗るという新発想です。

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(斬新なアイデアから生まれた「車椅子乗りぶらんこ」)

車椅子に乗ったまま赤いスロープでぶらんこへ移動します。黄色の柵で周囲をカバーしており、もちろん落下の心配はありません。車椅子と子どもを合わせるとかなりの重量になりますが、そこはNitto最大の強みである「頑丈な部材」「安全な構造」だからまったく問題なし! なんと一般的なぶらんこと同じく2台が並んだタイプをつくってしまいました。

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「じつは、この『車椅子乗りぶらんこ』は日本初の画期的な製品なんです。今ではアメリカにも似たようなぶらんこがあるんですが、ひょっとするとこれが原型になったかも? なんて思ったりします」

こう語るのは、20年前からユニバーサルデザイン遊具に携わってきたNittoの営業マン。自治体に販売する際にも、利用者に説明する際にも、やはり‶日本初〟というフレーズにメーカーとしての誇りを感じると言います。

すべてが手探りの「オリジナル開発」

遊具づくりは多くの工程が手作業であり、お客さまのご要望に合わせて設計するオーダーメードの製品です。時間や労力はかかりますが、蓄えた経験や技術があるからこそスムーズな遊具づくりが可能です。

ところが、ユニバーサルデザイン遊具は事情がまったく異なります。
すべり台にしてもぶらんこにしても、すでに存在する‶成熟製品〟でありながら、あらゆる障害とあらゆる条件を考慮してつくりなおす‶新製品〟だからです。安全性が最優先される製品だけに、一切の油断も妥協も許されません。

「とにかく特別支援学校へ足を運んで、子ども、先生、保護者のみなさんからお話を聞くことから始まります。私たちが思ってもいない使い方をする場合もあるため、リサーチや意見交換を何度も繰り返しながら、言わば‶お客さまと一緒に遊具をつくっていく〟わけです」

すべてが手探りのオリジナル開発――。
ユニバーサルデザインはニッチな市場です。しかし、お客さまからいただいた‶成長のチャンス〟と捉えれば、開発の苦労もまた楽しみへと変わります。そして何より、これまで遊具で自由に遊べなかった子どもたち、さらには保護者や先生など関係者のみなさんに‶遊具の面白さ〟をお届けできたことは、Nitto社員の大きな励みと誇りになっています。


ユニバーサルデザイン遊具は、今回ご紹介したほかにも多数あります

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