商品のネーミングは、性能や価格を訴求するのと同等、あるいはそれ以上に重要な要素になることもあります。というのもネーミング1つで売上げが左右したり、企業イメージやマーケティングが変わったりするからです。
ネーミングが秀逸な企業として真っ先に思い出すのは、やはり「小林製薬」でしょう。喉の痛みなどを抑えるため喉に塗る薬「のどぬ~る」、おでこに貼って熱を冷ますシート「熱さまシート」などは、誰もが知っている製品名ではないでしょうか。
一度聞けば覚えてしまう分かりやすさ。さらには絶妙に織り込まれた商品コンセプトにより、「ちょっと喉が痛いな」「熱が出てきたかも」といったとき、自然と消費者はこれらの商品を思い出すわけです。
ところでNittoでは、新製品を売りだす際はデザイナーや設計者や営業マンなどが会議を開いて遊具のネーミングを決めます。会社として特に決まったルールはなく、その時・その場・その社員の感覚に頼ることがもっぱらです。
「名前を聞いてカタチを連想できるか」「聞いたときにちょっと気になるか」「製品コンセプトが伝わるか」など、いろんな観点から検討します。普通のネーミングがあれば奇抜なネーミングもあり、それらを振り返るだけでもNittoの軌跡が見えたりします。
奇抜だけど成功したネーミングの事例として「ジワジワ前屈」という商品があります。名前を耳にするだけでカタチが連想でき、ちょっと気になり、しかも製品コンセプトまで伝わるのではないでしょうか。
(ネーミングの成功例「ジワジワ前屈」)
台の上に上半身を乗せ、ジワジワと前方に傾けていく健康器具です。見れば納得!誰でも一瞬で利用法が思いつくシンプルさがウリです。立って行うより「楽に前屈ができる」と評判の健康器具ですが、ネーミングの面白さも手伝っていると思います。
これはNittoオリジナルの製品ゆえに成功しました。他方、各メーカーから似たような遊具が出ているケースもあり、この場合はネーミング事情も異なります。
例えば、幼児がまたがって前後にユラユラと揺れる乗り物系の遊具。パンダやウマなど可愛いデザインが多く、どこの公園にも1つは置かれている定番製品ですが、じつは呼び名はいろいろです。
(Nittoでの呼び名は「リンク遊具」)
遊具業界全体としては「ロッキング遊具」と呼んでいます。ところが、前後に揺れるため「スイング遊具」と呼ぶメーカーがあるなどネーミングはまちまちです。
ちなみに、Nittoでは「リンク遊具」と呼びます。遊具を揺らす仕組みに‶リンク機構〟というものを採用しており、その名前をそのまま遊具のネーミングに活かしているわけです。リンク機構は耐久性が強く、安全面でも高いメリットがあります。
現在Nittoでは、リンク遊具を小さくした製品が主流となっており、「リンクミニ」と呼んでいます。
「あれ、なんで名前が逆なの? 普通に考えるなら『ミニリンク』では?」
確かに、以前より小さいことをアピールする場合、一般的には「ミニ」が前にくる方が多いかもしれません。ミニ四駆やミニボトルなど、そのほうが分かりやすい面もありますが、そこには当時の世相が関係しています。
「当時、三菱自動車が人気車種であるパジェロの小さなタイプを発売した際、ミニパジェロでなく『パジェロミニ』だったんです。何だか響きがステキだなと思って、ミニリンクでなく『リンクミニ』に決まったんです」
こう語るのは、当時ネーミング会議に参加したNitto社員。
このアイデアが功を奏したのかは定かでありませんが、「Nittoのリンクミニ」は今なお売れ続けるロングセラー商品となっています。
そういえば、先日発売されたNittoの新製品のすべり台は「すべろんぐ」と言います。なが~い時間すべれるからだとか。ネーミングは重要です。でも、わりと適当なところもあるんですよ。
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