公園に置かれた遊具の本質は、子どもたちに遊んでもらうことにほかなりません。笑顔になってもらうこと、体力をつけてもらうこと、それに友だちと仲良くなってもらうことなどもそうです。
と同時に、遊具にはもう1つの側面があります。それは、利用者のニーズにしっかり応えることです。例えば、新しく遊具を設置する場合は、「あんな遊具が欲しい」「こんな遊具で遊びたい」といった声が上がります。その一方、古い遊具を撤去して新しい遊具に入れ替える場合などは、新設とは異なるニーズが存在することもあります。
「撤去する遊具の機能全てを再現してほしい」
すべり台にしろ、ジャングルジムにしろ、トンネルにしろ、元々ある遊具に子どもたちは慣れ親しんでいるようです。つまり、子どものニーズを最優先するためには、入れ替えをするにしても、それぞれの遊具が持っていた機能すべてを残してほしい、もっといえば新たに再現してほしいということです。
いろいろ検討したうえで、下記のようなコンセプトにたどり着きました。
「撤去する遊具の機能を全て受け継いだうえで、回遊性を持たせてゲーム性をプラス。立体鬼ごっこができる、まるでゲームの世界のような遊具」
分かりやすくいえば、撤去する遊具を各アイテムに落とし込み、それを上に重ねたり横につなげたりして、1つのコンビネーション遊具として再現しようというものです。
パネルを組み合わせ、巨大な迷宮をつくる。
一面が雪に覆われた公園で、その遊具の設置工事は始まりました。場所は北海道の札幌、2月初めのことです。「立体鬼ごっこができる、まるでゲームの世界のような遊具」ということで、当然ながらデザインも設計もかなり個性的です。
(1枚のパネルから組み立てスタート)
ちなみに、遊具の名前は「キッズラビリンス」といいます。ラビリンスとは、英語で「迷宮」のこと。すなわち‶子どもたちが迷宮をさまよう″がごとく、1つの遊具の中を回遊できるというネーミングです。ただ、複雑なコンビネーション遊具といえども、1枚のパネルから始まるわけで、どんな姿になるのか完成が楽しみです。
今回の遊具は、さながらブロック玩具のようにパネルやアイテムを横に、上にと順々に組み立てていくことになります。次第に出来上がっていくプロセスを見るのは楽しいものですが、どんな感じの作業なのか、途中の光景をちょっと覗いてみましょう。
(カラフルなパネルがいっぱい)
緑に赤に黄に青に――。色とりどりの鮮やかなパネルがたくさん使われています。ポップで楽しそうな感じが伝わってきますね。作業している人を見ると、大きなオモチャのなかに紛れたフィギュアのようで、遊具の大きさも伝わってきます。
迷宮の内部はヒミツがいっぱい!
「さあ、次はどっちへ逃げようか?」
「あの子、どこに消えたのだろう?」
「このトンネルをくぐるところ、誰かに見られてないかな?」
「しまった!上から誰かの足音が聞こえるよ!」
迷宮に見立てた遊具の内部には、ジャングルジムがあったり螺旋状のポールがあったり、あるいはロッククライムがあったりと、慣れ親しんだアイテムがいっぱい。上の写真のように、空中に浮かぶ赤いトンネルの向こうにはオレンジの壁が見え、足元には緑の空間があるけど、その先は謎。
次々と現れるのは、不思議な空間ばかり。上に登ったり、下に降りたり、右に行っては引き返し、左に向かっては友だちと鉢合わせたり――。まさしく‶立体鬼ごっこ″とばかりに、入り組んだ内部を進むたびにスリルと驚きが訪れるわけです。大胆な色づかいも、注目すべきポイントです。
突然、頭上には黄色の天井が現れたり、赤い斜面が現れたりと、ハッとする不思議な空間が次々と目の前に現れます。「おとぎ話の世界みたい」「中に入るだけで楽しくなってくる!」など、ほかにない世界観で子どもたちを魅了するのも狙いです。
まさに迷宮感はバッチリ!
でも、外に出てみると、雪のなかでまだまだ作業は続いています。大きな遊具になりそうですね。
地域に根付いて欲しい「立体鬼ごっこ」
雪がすっかり消えた公園に、真新しい遊具「キッズラビリンス」の全貌が現れました。大きいですね。華やかですね。何と言っても、あまり見たことのない楽しいデザインが目を引きます。新品のクレヨンの箱を開けたような、ワクワクした気分になります。
(立体鬼ごっこが楽しめるコンビネーション遊具「キッズラビリンス」)
左に見える赤い斜面登り、屋上に並んだ黄色いパネル、右端から伸びた青いすべり台などが目に付きますが、もちろん、それらはアイテムのほんの一部。迷宮のなかには、小さな雲梯や宙に浮かぶジャングルジムなど、まだまだ秘密のアイテムが隠れています。
(キッズラビリンスの「パース」)
写真では横長の壁のようなデザインに見えますが、パースを見ると、じつは「U字型」になっていることが分かります。遊具のいたるところに子どもの姿が見えますが、それぞれが異なる遊びをしている通り、迷宮の内部では本当に自由な遊び場が生まれるのです。
(スケルトンな外観だから「遊びを眺める」のも熱狂しそう)
「登りのアイテムはすべて種類が異なるので、遊びのなかで様々な動きを体験できます。また隠れるスペースを確保しつつ、全体的に視認性に優れているので安心です。『あ、あそこに1人逃げたぞ!』と指示を出すなど、遊具の外からでも遊びに参加できる楽しさもあります」
と、担当したデザイナーは語ります。「撤去する遊具の機能全てを再現してほしい」というニーズにお応えするのはもちろん、さらには‶立体鬼ごっこ″という新たな価値まで提供して、入れ替えを完了しました。
ここは、まさに子どもの迷宮――。
立体鬼ごっこが流行ると嬉しいですね。
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設置風景の動画はこちら。
https://youtu.be/yBNmGBvKrJ4