つい先日、「立体鬼ごっこが楽しめる巨大遊具」をご紹介しました。カラフルな色使いや複雑な設計が特徴であり、かつてないデザインも注目を集めています。当HPにてご紹介していますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
立体鬼ごっこは面白い!熱狂しそうな新遊具――「キッズラビリンス」
ところで、この遊具デザインを担当したのが、デザイン課に所属する門倉さゆり(33歳)。Nittoに入社して9年、入社早々はオリジナル製品の開発に携わり、近年はテレワーク第1号になるなど、中堅どころとして元気に活躍している女性デザイナーです。
「ニットという会社は、やりたいと手を挙げた人にはやらせてくれる雰囲気があります。だからキッズデザイン賞は自分で応募しました。自分でセミナーを見つけて参加したり、パンフレットのデザインまで考えたり、苦労は多かったけど良い経験になっています」
あっけらかんと、ときに笑顔を交えながらNittoでの仕事ぶりを語る門倉。ただ、‶言うは易し″というように、どんな会社でも自分で思いつき行動に移すことは、決して容易なことではありません。それでも彼女は地道にトライアルを繰り返し、そうした成果の1つとして、例えばキッズデザイン賞の受賞があります。
一歩踏み出す勇気があるのかもしれない――。自身の性格をこんな風に語る門倉ですが、具体的にはどんな一歩、いかなる勇気なのでしょうか。今回はそんな、「実行力がありすぎる職人」のご紹介です。
キッズデザイン賞を目指して奮闘
門倉というデザイナーを説明するとき、真っ先に思い浮かぶのは「りぐりぐ」という製品です。乳幼児のために独自開発したシリーズにして、第11回キッズデザイン賞「子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン部門」を受賞したからです。
彼女が遊具デザインという仕事に対して手応えを感じたきっかけとなり、また、その後の働き方にも大きな影響を与えたようです。しかし、この受賞の裏には意外なことがたくさんありました。
(キッズデザイン賞を獲得した乳幼児向け遊具「りぐりぐ」)
「まず、『りぐりぐ』という製品シリーズの主担当になったのは入社2年目のときです。若いですよね?しかも基本的には1人です。製品化まで3年越しのプロジェクトだったのですが、責任の重さと面白さを痛感した体験となりました」
遊具のデザインのみならず、市場リサーチや利用者インタビューなど必要なことはすべて自ら取り組んだとか。保育園に協力をお願いして、園児たちと1日一緒に過ごしながら遊ぶ様子を観察したり、先生方のニーズを伺うなど、徹底して現場にこだわりました。
(予測不能な園児の特性をリサーチ)
(先生方の意見も貴重な材料)
(ユーモラスで可愛らしい、開発当初の手描きイラスト)
3年越しのプロジェクト。さらには主担当という立場は、入社したての若手デザイナーには少々荷が重かったのではないでしょうか?それとも逆に奮起したのでしょうか。
「正直にいえば、プレッシャーは重かったです。でもニットに入社した当初から、キッズデザイン賞を獲ることを目標にしていたので、『このチャンスは絶対に逃せまい!』と、自分を鼓舞する日々でした。会社のサポートや周りの人のアドバイスがあって何とかやり遂げられましたが、目標としていた賞をもらえたことは大きな励みとなりましたし、その3年で働き方の基礎を学んだと思います」
しっかりした口調にこそ、門倉の密かな自信を感じることができます。開発に向けた3年は、おそらく語る以上の苦労があったのでしょう。しかし、彼女はそんなことを微塵も感じさせず、笑顔を絶やしません。達成感や受賞や周囲への感謝を含めて、精神的に成長を遂げたことも大きな成果だったようです。
見たこともないモノを見せたい!
「1年で40近い提案をします。1つひとつ遊具のコンセプトを決めて、パースに起こして、お客さまのニーズをカタチにするわけです。小さい遊具なら数日でパースは完成しますし、大きなモノになると2週間ほどかかることもあります」
にこやかに日々の仕事ぶりを語る門倉ですが、これはあくまで彼女のペースであり、Nittoには複数のデザイナーが在籍しています。みなそれぞれに個性があり、得意分野があり、お客さまのニーズに応じて担当を振り分けています。動物のモチーフを数多く手がける社員もいれば、乗り物系のデザインを得意とする者もいるわけです。
さて、門倉が得意とする、あるいは好きなのは、インスタ映えするようなデザインや、ほかとは異なるエッジが効いたデザインなど。
(巨大な人間をモチーフにしたパース)
例えば、巨大人間をモチーフにした上記デザインなどは、壮大な世界のなかにもどこか温かみを感じますよね。自然と調和したオブジェのようでもあります。かと思えば、思いっきり発想を転換して、下のようにカラフルなデザインを生み出すこともあります。
(見たこともないデザインが特徴の「キッズラビリンスのパース」)
‶立体鬼ごっこ″をコンセプトに据えた、巨大なコンビネーション遊具です。子どもたちに新たな遊びを提案すると同時に、ユラユラとした柔らかなシルエットは、きっと公園でも一際目立つに違いありません。普段は使わない色をふんだんに使っている点も特徴です。多様なデザインに挑戦する門倉ですが、仕事を進めるうえで外せないポイントがあるそうです。
「全国にはいろんな遊具があるので、なるべく違いが出るように心がけています。例えば、コンビネーション遊具の場合、すべり台やステップなど複数のアイテムを集積してつくるのですが、既存アイテムでもデザインを工夫して新しい遊具はつくれます。効率的な手法です。ただ、それでは違いが出にくいですよね?それに新しいアイテムがあった方が楽しいと思うので、必ず新規アイテムを1つは入れるよう努力しています」
(完成したコンビネーション遊具「キッズラビリンス」)
個性的なデザインが人目を引きますね。確かに、門倉が目指すところの「違い」は表れているようですが、この遊具の開発にあたっては、お客さまからのこんな言葉が支えになったそうです。
見たこともないモノを見せてほしい――。
刺激的な激励ですね。こんな言葉をいただいたら、デザイン魂に火はつくものです。
特殊なデザインを遊具として製品化するには、もちろん安全に遊べることが大前提となります。設計チームや営業や代理店といった多くの協力を得ながら、Nittoの遊具は1つひとつ大切につくられているわけです。
一歩を踏み出す勇気
現在、門倉はほぼ毎日をテレワークで行っています。新型コロナの影響もありますが、それ以前から実践しており、Nitto社内の‶テレワーク第1号″でもあります。通勤時間がなくなり子どもと過ごす時間が増えたほか、すっかり身に付いたテレワーク術で生産性も上がったようです。
(読売新聞でも紹介されたテレワーク風景)
中小企業のメーカーとしては比較的に早い取り組みでした。そのせいもあり、最近は‶テレワークの成功事例″として様々なメディアで紹介されることもあります。面白いのは、テレワーク第1号となるまでの門倉らしい行動です。
「結婚を機に将来のことを具体的に考えました。『この先子どもが生まれたら、地元に帰ったら、今のまま仕事を続けることは難しいかもしれない。そして、これは自分に限った問題ではない・・・』。2015年のことです。もしニットでテレワークができて、そういった事情で辞めるという選択肢が消えるのなら、当事者にとっても会社にとってもプラスになると思ったんです」
とはいえ、当時はまだ世の中にテレワークは広まっていませんでした。そのため門倉は、自分が言い出しっぺになることを決断しました。自分でテレワークに関する制度を調べて、セミナーにも顔を出して、それをリポートにまとめて会社に提案したのです。総務部の社員のサポートや上司の協力などもあり、結果として、テレワークを認めてもらえることになりました。
実行力に加えて、まさしく「為せば成る」という信念が門倉を動かしたようです。ここでふと、思い出すことがあります。それは、デザイン賞を目指して奮闘した入社2年目の経験。若い頃につかんだ仕事の流儀が今なお生きているのでしょうね。おかげでNittoは、先んじてテレワーク導入を進めることができました。
(まだまだ違いのあるデザインを創造していきたい――「デザイン課 門倉さゆり」)
「何事も、一歩踏み出す勇気かもしれません」
自分の特徴をこんな風に表現する門倉――。40年経っても50年経っても色褪せない遊具をつくりたいと語ります。もしかするとその1つこそ、キッズデザイン賞をもらった乳幼児向け遊具「りぐりぐ」かもしれません。なぜなら。
「りぐりぐのパートⅡを開発中です!」
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